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設計者のための免震入門(7) ダンパーの役割と減衰特性
 
 
等価減衰による減衰性能の評価
 等価線形化手法は、弾塑性系システムの応答を等価周期と等価減衰に置き換えて評価する手法である。等価線形化手法は定常的な応答、あるいは線形に近い振動系の応答などを評価する場合には有効と思われるが、非線形性が強い振動系の非定常な応答を求める場合には等価周期と等価減衰を求める際に工夫が必要となる。
 通常、等価粘性減衰定数 he は次式で定義される。
(9)
 等価減衰定数はJacobsen2)により最初に提案された概念である。Jacobsenは、「等価粘性減衰の概念を任意の非線形系に安易に適用するものではない」こと、「非粘性減衰をもつ系に対して等価粘性減衰定数を求める問題には学問的に未決着のいくつかの仮定が含まれている」ことを指摘しつつ、等価粘性減衰定数はWとして、骨格曲線下の仕事面積を採用すれば、「概略の式」である(9)式で表現できるとした2)3)。(9)式におけるWの取り方に関しては、種々の提案がある。図10には異なるWの取り方を示す4)。Jacobsenの方法はW3である。Wの評価により、履歴面積( ΔW )が同じであっても he は大きく異なることになる。HudsonはW1の取り方を提案した。通常、WとしてはW2が用いられることが多い。
図10:等価減衰定数の算出におけるWの取り方


 Jennings5)は、数種類の手法に基づいて等価減衰と塑性率の関係を求め、その特徴について論じている。図11には完全弾塑性型復元力モデル( αs =0.05)に対して算出した等価減衰定数を示す。Dynamic Stiffness法はCaughey1)により提案された方法であり、Geometric Stiffness法は、通常用いられる方法であり、履歴特性の幾何学的な関係から求められる方法である。等価減衰の定義によって等価減衰の大きさと傾向に大きな差が見られる。若林4)は等価粘性減衰定数のみを用いる方法では定性的な履歴減衰の性状を理解するのには良いが、履歴減衰が大きくなれば誤差が大きくなってこの考えの意味はなくなるとしている。
図11 いろいろな等価粘性減衰定数
図11:いろいろな等価粘性減衰定数


 減衰性能の相互評価に際しては等価減衰定数での比較が効果的といわれるが、等価粘性減衰定数の算出には等価剛性も関係しており、等価剛性の取り方によって等価粘性減衰が変化する。これを避けるためには、履歴面積 ΔW を直接評価することが必要であると考える。
 そういう意味で免震部材の履歴特性を検査・確認する場合には、初期剛性、降伏後剛性、降伏荷重、そして履歴面積などが所定の数値に合致していることを確認することが優先されるべきであり、等価剛性、等価減衰定数による評価は2次的なものと考えるべきである。
参考文献
1) T. K. Caughey, "Sinusoidal Excitation of a System with Bilinear Hysteresis", Journal of Appl. Mech., ASME, pp640-643, Dec., 1960
2) Lydik S. Jacobsen, "Damping in Composite Structures", Proc. 2nd WCEE, Vol.2, pp1029-1044, 1960
3) 渡辺啓行, "履歴型の減衰定数についての考察", 電力土木, No.233, pp3-11, 1991.7
4) 若林實, "構造物の減衰とエネルギー吸収能力について", 京都大学防災研究所年報, 第17号A, pp27-47, 1974.4
5) P.C.Jennings, "Equivalent Viscous Damping for Yielding Structures", Proc. ASCE, Vol.94, EM1, Feb. 1968
6) 日本建築学会、"免震構造設計指針"、2001年





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