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設計者のための免震入門(13) 免震部材の製品検査と施工
 
 
施工と維持管理
 免震建築物の施工にあたっては、免震構造の設計要求品質を十分に確保できるように免震部材などの品質確保、施工の品質確保をはかる必要がある。
 免震部材の製作管理にあたっては、設計図書などで規定された品質が確保できるように、製品検査や性能確認試験などにより確認する。免震部材の品質は、力学特性(限界性能を含む)、性能のばらつき、耐久性などにより総合的に評価されるべきであり、単にカタログに示される性能が同一であるからといったことで評価されるべきではない。同じゴム材料を使って、同種の製品を製作していても、実際にはゴムの配合や製造方法はメーカーごとに異なっている。このような差異は限界性能や各種の依存性の評価でしか明らかとならないことが多い。従って、免震層に配置される全部材の水平剛性や降伏荷重など(全体の履歴特性)が同程度以上でありさえすれば、部材の組み合わせはコストが安い方が良いといった短絡的な考えは免震性能を正しく評価しているとは言えない。
 受入検査では、免震部材の材料検査、外観検査(有害な傷や変形などがないか)、寸法検査、性能検査、防錆検査などが書類上あるいは立ち会いのもと実施される。寸法検査は直径、高さ、傾斜などが規定値内にはいっているかを確認する。特にアイソレータに鉄骨柱を直接建てる場合にはアイソレータの傾斜の大きさは厳密に管理されるべきである。逆に、柱の傾斜などにより積層ゴムに過大な曲げ変形が与えられると性能低下の要因となるので施工にあたっては注意がいる。
 仮設計画では、施工中にうける中小地震や風荷重により上部構造が水平移動することを考慮して、施工中に建物を水平方向に動かないように固定するか、水平方向への移動を許容するかを明確にしておく。
 免震層の施工にあたっては、アイソレータの下部ベースプレートの設置精度がそれ以降の免震部材の設置精度ならびに躯体精度に大きく影響するため重要となる。施工時の水平精度の管理値としては構造種別などによっても変動するものの1/400〜1/1000、位置精度は±3〜5mmなどとなっているようである。免震部材をベースプレートに設置する際には固定ボルトがきちんと締結されていることを確認する。
 竣工時には、免震建物として機能を果たせることを確認するために竣工時検査を実施し、記録を所有者や監理者に提出するとともに保管しておく。竣工時検査では水平クリアランス、鉛直クリアランス、免震部材の位置、傾斜などの初期値を計測しておく。なお、建物規模が大きい場合、コンクリートの乾燥収縮により積層ゴムが建物の中心に向かって水平移動することがある。コンクリートの打設順序を工夫するなどの対策を行っても完全には防ぐことは難しいので、乾燥収縮による水平移動を予測し、免震建物としての性能(水平剛性、降伏荷重、限界変形能力など)に影響がないことを確認しておく必要がある。
 免震建物の性能を維持するためには、免震部材、免震層・建物外周部、設備配管などについて点検が必要となる。維持管理の体制は、建築主、建物管理者、設計者、施工者の間で事前に協議されるべきである。通常は建物管理人が目視により免震部材や免震層まわりに異常がないかを確認する程度で十分である。設備工事や建物周辺工事にともない配管の変形能力やクリアランス(建物の水平移動)を拘束することが無いような注意がいる。大きな地震や火災、浸水などが発生した後には専門家による検査が必要であろう。この時、検査すべき項目や取り替えのための基準や体制なども予め決めておくことが望ましい。





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