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設計者のための免震入門(13) 免震部材の製品検査と施工
 
 
試験方法一般
(a)試験体
 試験体には実大試験体を用いるのが原則である。試験装置の関係でやむを得ず縮小試験体を用いる場合の縮小比は少なくとも1/2以上であることが望まれる。サイズが小さい試験体ほど接着や成型が均一に行われ、欠陥が少なくなり、限界変形も大きくなることがわかっている。縮小試験体を用いる場合には、厳密に相似則を適用して、中間鋼板の厚さやフランジの取り付け方法なども寸法比をあわせることが必要である。


(b)試験方法
 試験方法では免震部材の性能評価をする上で、面圧、変形、速度、加力波形、繰返し回数の設定が免震部材の特性や試験の目的にあっているかどうかを検討する。限界性能試験は、単調載荷あるいは繰返し載荷で行われることがあるが、載荷方法の影響について検討することも必要である。特に、積層ゴムの限界性能では一方向への載荷ではなく、正側から負側に繰り返すことで座屈傾向が明らかになったり、破断限界が明確になることもある。


(c)試験装置と計測
 試験装置の載荷能力や精度、摩擦力や慣性力の補正方法などについて検討しておくべきである。また、変位や荷重の計測位置や測定精度についても確認することが必要である。特に積層ゴムの鉛直剛性は高いため、試験体から離れた点で鉛直変形を計測すると試験装置面盤の面外変形が含まれる危険性がある。鉛直変位計は試験体に非常に近い位置で計測することが重要である。


(d)試験データの評価方法
 部材特性を等価剛性や等価減衰定数で評価することも多いと思われるが、等価剛性では座屈やハードニングの影響を過小評価する傾向にある。また、等価粘性減衰は履歴吸収エネルギー(履歴の面積)が同じであっても等価剛性が変化すれば影響をうける。免震構造設計指針でも説明されているように接線剛性と履歴吸収エネルギー量で評価することも重要である。高減衰ゴム系積層ゴムでも応答解析用モデルはバイリニア型であり、履歴特性を初期剛性、降伏後剛性および降伏荷重で評価することが合理的である。水平加力時の鉛直変形量についてはあまり注意されていないが、積層ゴムの性能を比較する上では重要なデータになり得る。
 限界性能試験では、加力時の免震部材の変形状態を良く観察し、部材の実挙動と履歴曲線上に見られる座屈・負剛性の発生などとの対応を理解することが肝要である。
 試験方法では免震部材の性能評価をする上で、面圧、変形、速度、加力波形、繰返し回数の設定が免震部材の特性や試験の目的にあっているかどうかを検討する。限界性能試験は、単調載荷で行われることが多い。しかし、積層ゴムの限界性能では一方向への載荷ではなく、正側から負側に繰り返すことで座屈傾向が明らかになったり、履歴特性の安定性を確認することができる。繰り返し載荷試験の結果を評価する際、何サイクル目の履歴曲線を使うのかが問題となる。現状では、3サイクル目が多いようであるが、3サイクル目が履歴特性を代表できるか否かを確認すべきである。
図2:免震部材・免震システムの履歴曲線


 水平履歴特性の例を図2に示す。破線の履歴曲線は限界に近い履歴特性を示す。水平剛性は等価剛性と接線剛性で評価する2つの方法がある。等価剛性では座屈などの不安定現象を過小評価するので、変位0近傍での接線剛性で評価することが必要である。初期剛性は上部構造のフロアレスポンスに与える影響も大きいので、単に履歴面積を合わせるためではなく、適切に評価することが重要である。
 部材特性を等価剛性や等価減衰定数で評価することも多いと思われるが、等価粘性減衰は履歴吸収エネルギー(履歴の面積)が同じであっても等価剛性が変化すれば影響をうける。免震構造設計指針でも説明されているように接線剛性と履歴吸収エネルギー量で評価することも重要である。高減衰ゴム系積層ゴムでも応答解析用モデルはバイリニア型であり、履歴特性を初期剛性、降伏後剛性および降伏荷重で評価することが合理的である。水平加力時の鉛直変形量についてはあまり注意されていないが、積層ゴムの性能を比較する上では重要なデータになり得る。
 限界性能試験では、加力時の免震部材の変形状態を良く観察し、部材の実挙動と履歴曲線上に見られる座屈・負剛性の発生などとの対応を理解することが肝要である。


(e)ゴム材料配合
 積層ゴムに使用されるゴム材料はゴムポリマーに対して種々の添加剤が混入されている。積層ゴムの設計で最も重要なのはせん断弾性率Gである。しかし、同じGでもゴム配合は異なることがある。ゴム配合が異なればゴム素材のハードニングの程度や破断伸びなども異なるため、特に積層ゴムの限界特性へ与える影響も異なってくる。従って、ゴム材料の配合はできるだけ明確にすべきであり、添加剤などの効果について情報を設計者とメーカーで共有すべきである。ゴムの配合に関しては完全にオープンではないが、設計者はゴム配合や材料試験に関して関心を持つべきである。


(f)今後の課題
 免震部材の性能評価は未だ十分ではない。特に、実速度、実変位を載荷した限界特性の確認、経年変化の問題、2方向加力、試験装置の能力不足に伴う大型積層ゴムの性能確認の不足など、幾つかの課題がある。試験機能力の問題は今すぐ解決できないが、性能検査の手法を幾つか組み合わせるなど、十分な品質を確保していると判断できる試験方法を用いていくことが望まれる。





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