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設計者のための免震入門(4) 積層ゴムの構造と特徴
 
 
(5) 限界性能曲線(限界ひずみ)
日本免震構造協会編「免震部材標準品リスト2001」では認定材料の基準値一覧が示されている。図2に限界面圧とせん断ひずみの関係の一例を示す。積層ゴムの種類は天然ゴム系積層ゴムと鉛プラグ型積層ゴムで、いずれも直径は1000mm、2次形状係数は5、ゴムのせん断弾性率は4kg/cm2である。同図より同種の積層ゴムについて限界性能を比較すると、せん断ひずみの小さい領域では限界面圧の違いは大きいものの、限界変形付近の特性は類似している。特に最大変形能力は全てがせん断ひずみ400%で一致している。同じ種類、形状の積層ゴムであるにもかかわらず、メーカー間で限界性能に大きな違いが生じる原因は何であろうか?
 問題は何をもって限界としているのか、その時の履歴曲線の状態はどうなっているか、実験データの信頼性、スケール効果は、メーカー間の評価法の統一は計られているのか等についてデータが開示されることが、正しい部材性能を認識する上で非常に重要であると考えている。


図2:限界面圧とせん断ひずみの一例


 免震部材、特にアイソレータの使用可能範囲として、図2に示すような座屈面圧に基づいた限界曲線を実験で確認することになっている。この限界曲線を求めるための実験データの信頼性も重要であるが、この限界範囲内であれば、アイソレータの性能は確保されていると勘違いされるケースもある。限界範囲内であっても水平剛性の面圧依存性や履歴曲線の線形性が確保されているとは言えない。本来ならばアイソレータの履歴曲線に基づいて設計者はその使用性について判断すべきである。そこで図3に示すように、水平剛性の面圧依存性や線形性を示す領域を記載し、アイソレータの特性が明瞭に判断できるようにすることも今後必要であろう。


図3:アイソレータの限界曲線の例


(6) 基準面圧と規定ひずみ
 基準面圧や規定ひずみは、免震部材の基本性能や限界性能を測定する際のメーカーの測定条件であり、告示では次のような範囲が示されている。
 基準面圧:圧縮限界強度の10%〜30%の面圧
 規定ひずみ:限界ひずみの20%〜70%のせん断ひずみ
従って、製品の形状や材質ごとに基準面圧は変化している。また、基準面圧や規定ひずみによるにおける性能が確保されていたとしても、それらを超える領域において性能がどのように変化するのかを確認する必要がある。
(7) 各種依存性、ばらつき
 告示2010号の性能評価項目には、積層ゴムの面圧依存性、減衰性能を有する積層ゴムでは重要と思われる速度依存性、繰り返し依存性などの重要な評価項目が明記されていない。製品ばらつきは、過去の製造実績から求めたものであり、プロジェクト単位であればより小さなばらつきにすることも可能である。
 性能評価が不十分な告示で正しい部材性能を認識できるはずはないと思われる。最も大切なことは、設計者自身が免震部材の性能を正しく評価し、不十分なデータがあれば追加試験などを強く求めることである。
(8) 復元力特性
 告示による構造計算では、剛性や降伏耐力の基準値を用いることになっている。この基準値が大地震時にも安定的に発揮されるということが大前提である。しかし、免震部材の復元力特性には何らかの依存性をもっているものも多く、それらの影響を十分に把握した上で設計に用いるべきである。
 免震構造の設計では、部材認定で示された基準値を採用する場合には、その値が変動しない範囲(面圧や変形量)内で使用することが肝要である。時刻歴解析による設計では、免震部材の復元力特性を各種の依存性を考慮して決定すべきである。





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