上部構造の影響 |
上部構造の周期特性が免震効果に与える効果を確認するために図5の2自由度系モデルを用いて時刻歴応答解析を実施する。免震層の復元力特性は図8に示すように、線形のアイソレータと完全弾塑性型のダンパーで表現されるものとする。免震層全体の復元力特性はバイリニア型となる。アイソレータの水平剛性は、免震周期 T が3,4,5秒となるように設定した。ダンパーの降伏せん断力係数 αs は5%、初期剛性は弾性時の周期が1秒となるように決定した。非免震時の上部構造の周期は0.2〜5秒まで変化させた。上部構造は弾性とし、粘性減衰として2%を与えた。質量比 µ =0.8とした。 |
入力地震波にBCJ-L2を用いた時の結果を図9に示す。同図より、非免震時の応答はせん断力係数でも層間変形でも免震構造とした場合の応答の2倍以上となっている。免震構造とした場合には上部構造の周期が大きくなり免震周期に近づくにつれ、上部構造の応答低減効果は小さくなるものの、免震効果は十分あることは明らかである。また、上部構造の周期が長くなるに従い、免震層の応答は低下している。これは上部構造の応答が大きくなった影響である。このように上部構造の周期と免震周期が一致しても免震性能が極端に低下することはないと言える。 |
このことは、文献3)4)でも示されているとおり超高層建築物を免震化しても十分な免震効果を得られることを示している。なお、超高層建築の場合、地震時の転倒モーメントにより積層ゴムに引張力が作用するケースが増える可能性があるが、免震周期をできるだけ長周期化することで上部構造に作用する地震力と転倒モーメントを低減し、大きな引張力を作用させない様な設計を行うことで対処可能である。積層ゴムに引張が作用する場合、積層ゴムの引張変形能力は大きいことが明らかとなったため、引張力ではなく引張変形に着目することが有効である。この様な検討成果と免震部材の性能向上により超高層建築への免震技術の適用拡大が計られてきている。 |