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設計者のための免震入門(8) 免震層の設計
 
 
免震構造の限界状態
 免震層には、積層ゴムやダンパーなどの免震部材が設置される。当然ながら免震部材の設計と免震層周りの設計とは関連がある。通常の構造設計では、構造部材に作用する応力に着目されるが、免震層あるいは免震部材の設計では応力(度)よりも変形量(最大変形量、累積変形量など)が特に重要となる。
 免震部材、特にアイソレータ(積層ゴム)の変形能力はどれくらいか、水平剛性をどこまで柔らかくできるか、建物と敷地の関係などにより免震層の可動範囲(許容変形量、クリアランス)をどの程度確保できるのか、などが免震建物の性能を確保する上で重要となる。
 設計された免震建物の限界状態を想定しておくことは重要である。免震建物に想定外の地震動が入力した場合、免震建物はどういう状態になるのか、逆に言えば、建物のどこを壊すのか。考えられる状態としては、
・アイソレータが破断する
・敷地周辺の擁壁に衝突する
・上部構造が塑性化する
・基礎構造が塑性化する
となる。アイソレータの破断あるいは擁壁衝突に至るまでの入力レベルを把握することで、免震建物の安全余裕度を評価できる。ただし、衝突時には上部構造に大きな加速度が発生することになる。上部構造や基礎構造の塑性化を先行させることは免震構造の目的から言って最後の選択肢とすべきである。


免震構造の地震時性能
 免震構造の地震時性能としては、免震層変位や上部構造の最大加速度・層間変位などが考えられる。最初に、これらの目標性能を設定する。例えば、想定した地震入力に対して免震層変位は30cm以下、最大応答加速度は250gal以下など。このように設定した性能を満足するように免震部材と上部構造の設計を行っていけば良い。この時、想定した地震入力に対して、免震部材の設計目標を得るために予備的な応答解析をするのも一つの手法ではある。しかし、応答解析では入力地震波の特性に依存した結果が得られるため、地震波の特性に依存しない包絡解析法(免震構造設計指針を参照)を用いることが有効であると考える。包絡解析法における入力レベルは、地震による総エネルギ入力 を次式により変換した等価速度 VE で表される。
(1)
ここで、M:建物総質量
 通常の地震応答解析で用いられる地震動のレベルは、 VE =150cm/sにほぼ対応している。また、兵庫県南部地震でのエネルギ入力量としては、震源に近いほど大きく、 VE =200〜300cm/s前後ではなかったかと推定されている。
 図1に包絡解析法より求められるベースシア係数と免震層変位の関係を、 Tƒ=4secの場合について示す。下に凸型の曲線はベースシア係数と免震層変位の関係を VE =120 ,150, 200, 300cm/sの場合について描いたものであり、右上がりの直線は Tƒ=4secに相当するアイソレータの剛性に対応している。変位0cmの時のベースシア係数がダンパーの降伏せん断力係数 αsを示している。この図より、ベースシア係数を最小とするダンパー量には最適値があることが判る。この時の免震層変位は容易に求めることができる。
図1
図1


 図2には VE =150cm/sの場合について、 を変化させた時のベースシア係数と免震層最大変位の関係を示す。図中には、ベースシア係数の極小値を結んだ曲線も描かれている。免震周期 Tƒが2秒から4秒へと大きくなるに従いベースシア係数の低下率も大きくなっている。4秒以上ではその低下の度合いも小さく、免震周期4秒程度以上が免震効果の一つの到達点と考えられる。免震周期 Tƒ=4secの時、免震層変位としては VE =150cm/sでは20cm程度、 VE =200cm/sでは30〜40cm程度を考えておけばよいことが判る。免震構造の設計では地震入力に対する建物の応答が正確に予測されるため、対象としている建物に求められる性能に基づいて、入力レベルやクライテリアの設定を行っていくことが重要である。
図2
図2





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