設計者は建築構造に於ける"主要構造部材たる免震部材"との認識に立って、その品質,部材としての適応性等を総合的に判断することが必要であり、技術者(エンジニア)として自らの目で確認する事が望まれる現状である。ただ現状ではコンクリートや鋼材のようにゴム材料まで含めた標準化は進んでおらず、メーカーに依存した体制となっている。今後、免震部材についても材料・配合や形状から性能を予測できるような環境を作っていく必要がある。このためにも、設計者は免震部材が柱や梁と同じ構造部材であるとの認識に立ち、免震部材の調査・研究を行い、免震部材の選択、設計、仕様の決定を行うべきである。この様な仕様に基づいて、メーカーは免震部材の製作方法を管理し、品質を一定の範囲内に納めなければならない。設計者には、免震部材の製作と性能・挙動に関する十分な認識が求められている。 |
設定した免震性能を満足する積層ゴムを設計・選択する際には、下記の点に配慮しなければならない。 |
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要求性能:積層ゴムに求められる性能を満足しているか |
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品質管理:メーカーの製作段階における工程管理能力はどうか |
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コストパフォーマンス:要求される性能とそれを実現するためのコスト評価 |
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天然ゴム系積層ゴムは、引張強さや伸び、耐クリープ性に優れ、温度変化による物性変化の少ない天然ゴムを主体とした積層ゴムである。履歴ループは面積が小さく、エネルギ吸収部材としてのダンパーが必要となる。しかし、履歴特性は軸力の変動や変位履歴による影響はほとんど無く、微小変形から大変形まで安定したバネ特性を有している。このことは、解析のためのモデル化が簡単であり、精度が高いことを示している。天然ゴム系積層ゴムは種々のダンパーと組み合わせることで、免震層の履歴特性を設計者の意図どおりに設定することができる。 |
一方、鉛プラグ挿入型積層ゴムや高減衰ゴム系積層ゴムの履歴ループは面積が大きく、エネルギ吸収能力が高いことを示している。鉛プラグ挿入型積層ゴムは、積層ゴム中心の孔に挿入した鉛棒(積層ゴム外形の1/5〜1/7程度)の塑性変形を利用し、高減衰ゴム系積層ゴムは特殊配合のゴム材料によりゴム分子間の摩擦や粘性を高くすることでエネルギを吸収している。このため履歴特性はひずみ速度や変形量、及びそれまでに受けた変位履歴によって変化する。履歴曲線は微小変形域から複雑な非線形性を示し、設計用の解析モデルを作成する際には充分な配慮が必要となる。また、ダンパー機能を複合したことで、バネ特性と減衰特性の組み合わせの自由度が低下することも考えられる。アイソレータとしての積層ゴムの重要な特質は、小変形から大変形に至るまで柔らかい線形のバネを有することであると考える。 |