高山峯夫のホームページ
免震構造に関する研究 建築構造物の振動問題に関する研究 4menshin.net
トップページ
最新情報
略歴
記事
入門編
実践編
リンク集
お問い合わせ
記事
設計者のための免震入門(3) 免震建築の構造計画
 
 
動的設計
 耐震設計における動的問題には、地震入力、地盤の問題(相互作用問題)、部材あるいは骨組としての動的弾塑性問題など幅広い問題が複雑に絡みあっている。現在においても、このような問題をすべて完全に解決するには至っていない。そこで、問題を解けるようにモデル化(抽象化)を行い、このモデルを対象として解析を行うことになる。実体とモデルとのギャップをどの様に埋めるかは設計者の工学的判断によっている。
 免震構造は免震層、一種の人工地盤を介することで地盤との相互作用の影響を少なくし、上部構造を弾性範囲にとどめることで上部構造の不確定な要因を排除した非常に明快な構法である。従って、実体とモデルの差を小さくすることができ、解析によって精度良く応答を予測できる。免震構造の性能は積層ゴムやダンパーの性能に大部分支配されている。積層ゴムやダンパーの性能(動的特性)は、設計仕様に即した実物実験の結果などを参考に工学的厳密性をもって判断しなければならない。動的な応答の評価に際しては特性値(剛性や耐力など)が設計値を中心としたある幅の中にある必要があり、単に強ければ良いといった静的な考え方は通用しない。
 免震層にはアイソレータやダンパーなどの免震部材が設置される。現在、アイソレータやダンパーについては種々の提案がある。現在最も多い形式としては、
(1) 天然ゴム系積層ゴム+ダンパー併用
(2) 鉛プラグ挿入型積層ゴム
(3) 高減衰ゴム系積層ゴム
(4) 積層ゴムとすべり支承
などがある。@のシステムでは積層ゴムとダンパーを別々に設置するため、機能の分担が明快であると同時に、ダンパーの性能や配置を適切に選択できるため、設計の自由度が高い。このことは、免震建物の維持管理上、点検の容易さなどの利点も有している。いずれのシステムを採用する場合でも、荷重支持能力、変形能力、エネルギ吸収能力について充分な検証が求められる。
 免震構造の設計では想定する地震入力やレベルをどのように設定するかが重要となる。地震波の設定では、地震波の周波数特性(スペクトル特性)とレベル(大きさ)が問題となる。地震波の種類としては、大きく観測地震波と模擬地震波に分けることができる。観測地震波の中で通常応答解析で使用されるのは、EL CENTRO、TAFT、八戸などである。これらの波形は、高層建築物の動的解析用地震動に準じて、最大速度値で規準化されて用いられることが多い。地震動の強さは、レベル1とレベル2の2種類以上が設定される。レベル1地震動とは耐用年数中に一度以上受ける可能性が高い地震動とされ、東京礫層を支持層とした建物では最大速度25cm/s以上とされている。レベル2地震動とは当該敷地において過去に受けたことのある地震動のうち最強と考えられるもの、及び将来において受けることが考えられる最強の地震動とされ、最大速度50cm/s以上とされている。この様な地震動に対して在来構造では、レベル1地震に対して主要構造体は弾性範囲、レベル2地震動に対して人命に損傷を与える可能性のある破損を生じないことを目標としている。免震構造ではレベル2地震動に対しても上部構造は弾性範囲内の応答にすることが十分可能であり、在来構造に比べ格段に安全性が向上していると言える。
 模擬地震動は、設計用のスペクトル特性(速度応答スペクトルの使用が多い)に合致するように人工的に地震動を作成したり、断層を想定して、そこで地震が発生した場合に当該敷地に生じる地震動を計算で求めている。具体的には、断層モデル、スペクトル特性、地盤のモデルなどを慎重に仮定する必要がある。
 免震構造は軟弱地盤には不向きであると言われることが多かった。在来構造と同様の不同沈下対策や液状化対策を必要に応じて適用するとともに、入力地震動の設定に注意をすれば、適用の可能性は高くその効果も期待できる。文献2)には軟弱地盤を対象とした解析例も示されている。
 免震構造の設計の際、大きな地震動を考えるほど、大きな水平変形と大きな減衰を設定することになるが、逆にそれより小さな地震動に対しては充分な免震効果を発揮することは難しくなる。免震構造の設計では、想定した入力の大きさに対して最適な効果が得られるように設計する事になり、それより小さな入力では安全性は十分確保されるものの、免震効果は多少低下する。逆に、想定以上の入力に対しては、どの程度の安全性が確保されているのかを適切に判断することが肝要となる。いずれにしても設定した地震動に対して設計しようとする免震建物にどれ位の耐震性能を与えようとしているのかを明確にすることが求められている。





BACK 1 / 2 / 3 / 4 / 5
NEXT



copyright 2004 (c) Fukuoka Univarsary Takayama Mineo All right reserved.