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設計者のための免震入門(3) 免震建築の構造計画
 
 
免震建物の応答を支配するパラメータ
 免震構造の基本は、建物を支持し復元力を発揮するバネ特性(積層ゴムの設計)と適切な減衰を付与するダンパーにある。積層ゴムのバネの設定は免震建物の基本的な特性を決定する重要な要素である。積層ゴムの水平バネは免震建物の周期として表せる。この免震周期 は、上部構造(総質量を とする)を剛体とみなした次式で簡単に求めることができる。
(1)式
 ここで、 Κƒ は免震層にある積層ゴムの水平剛性の総和である。天然ゴム系積層ゴムの特性は線形であるため、免震周期 は積層ゴムの変形量に依存しない量として簡単に求めることができ、免震効果を確認する重要な指標となる。減衰機能を一体化した積層ゴム(例えば、鉛プラグ入り積層ゴムや高減衰積層ゴムなど)では、バネ特性と減衰特性の分離が困難であり、変形量に依存した周期(等価周期)でしか表現できないことになる。ここに機能一体型積層ゴムの取扱いの難しさがある。
 非線形問題を線形問題として扱う手法に等価線形化手法がある。これは、非線形バネを等価剛性と等価減衰定数で表現し、近似的に線形として扱う手法として考えられたものである。等価線形化手法は定常応答(常に一定の振幅で振動を繰り返している状態)の場合にはほぼ正解値を与える。しかし、地震応答のようなランダムな応答の場合の適用性については検討が不十分と思われ、今後の検討が必要であると考える。
 ダンパーの設計で最も重要なものが降伏耐力の設定である。弾塑性型ダンパーにおいて降伏耐力は減衰量を決定し、免震層の変形量をコントロールすることになる。ダンパーの降伏耐力の総和を とした場合、(2)式に示すように降伏耐力を建物全重量で除した値がダンパーの降伏せん断力係数 αsである。この値が免震建物の減衰量を表すパラメータとなる。同様に、積層ゴムアイソレータの最大せん断力 を建物重量で除した値がアイソレータのせん断力係数 αƒ となる。
(2)式
上式を用いて免震層のベースシア係数 は次式で求められることになる。これは上部構造の第一層のせん断力係数にほぼ等しい。
(3)式
 地震時の免震層の最大応答変位は地震応答解析などにより計算可能である。免震層の設計変位をどの様に設定するかは応答解析結果や種々の設計条件を考慮して決定されることになる。いずれにしても免震層には地震入力のレベルによっては20〜40cm程度の変形が生じることになり、この可動部分(出入り口など)のディテールをうまく処理することが建築計画上重要となる。また、設計変位に対して水平クリアランス をどれくらい余裕を持って設定すべきかなども、入力のレベルと建物に要求される性能を考慮して決定されるべきである。
 以上より、免震層の最大変位と免震周期 Τƒ 、及び降伏せん断力係数 αs が免震建物の性能を決定する主要なパラメータであることが判る。これらの関係は地震応答解析を数多く行うことでも求めることができるが、エネルギの釣り合いに基づいた包絡解析法2)により簡単に求めることができる。この手法は地震の荷重効果をエネルギとしてとらえ、地震により建物に投入されるエネルギ入力とアイソレータとダンパーで吸収されるエネルギ量を等値することで、免震層の最大変位や最大せん断力を予測することができる。
 上部構造が剛体と見なせないような建物、すなわち建物の高さが高くなり上部構造が相対的に柔らかくなる場合には、上部構造が硬い場合に比べ免震効果が低下することがある。免震効果を十分発揮させるためには、上部構造の剛性が高いほど都合がよい。上部構造の剛性は、上部構造を基礎固定と考えた時の1次固有周期 Τ1 で表すことができる。地震応答解析結果より、上部構造周期に対する免震周期の比率 Τƒ / Τ1 が2〜3倍程度以上であれば、ほぼ上部構造を剛体とみなすことができることが判っている2)。
これより免震周期 Τƒ が4秒以上であれば、上部構造の周期が2秒近い建物にも免震構造を採用することが可能になり、その効果も十分期待できる。また、上部構造の剛性が免震層の初期剛性に比べ柔らかい場合には、上部構造の応答に2次モードの影響が現れ、上層部と下層部で加速度応答が大きくなる。文献2)では上部構造の加速度応答に及ぼす2次モードの影響が示されている。このような現象を防ぐためには、免震層の初期剛性 Κs と上部構造の第1層の剛性 Κ1 の比率 Κ1 / Κs を50〜100倍程度にするのが効果的である。このような関係が満足されるとき、上部構造の応答はほぼ均一となり、剛体的な挙動が実現されるようになる。





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