予測式の検証
エネルギーの釣り合いによる応答予測の精度を確認するために1質点系モデルによる応答解析を実施した。解析モデルの周期 T
は1〜6sec、降伏変位
s
δ
y
は1cmとした。入力地震波は9種類で、El Centro(NS), Taft(EW), 八戸(NS)は最大速度を50cm/sに規準化している。その他のMexico地震やNorthridge地震などの観測波は原波形を用いた。
解析結果より、(3)式で定義される κ は周期の影響をあまり受けていないが、入力波の特性の影響を受け2〜15程度まで変動する。大部分の場合 κ は8以下となっている。一方、
は周期3sec以上では0.5〜0.8程度であり、 κ が小さな値をとる場合ほど低い値を示している。なお、入力エネルギーの等価速度
V
E
(t
0
) は周期3sec以上ではほぼ一定値を示し、100〜300cm/sの範囲にあった。
図6には免震層最大変位と(5)式による予測値の関係を示す。(5)式の適用では κ =8、
V
E
=
V
E
(t
0
) とした。なお、ここでの t
0
は応答解析終了時としている。同図より、特にSylmar波(Northridge地震)の場合に予測値が小さくなっている以外は、予測値はほぼ安全側の予測になっていることが判る。
図6:応答解析での最大変位と予測値の比較
エネルギーの釣り合いに基づいた応答予測では、実際の応答が κ =8である場合でも
の値によっては予測値の精度は変化する。Northridge地震のような地震波の場合、 κ は4程度で
も0.8〜1.2と大きかったために、予測値の精度が低下したと考えられる
4)
。 κ を4,8,16と変化させた場合の応答値の変動を図7に示す。同図より、 κ が8よりも大きければ応答値は小さくなり、 κ が小さければ応答値は大きくなることが分かる。想定する地震動の特性によっては応答の予測値が変動することを考慮しておく必要がある。
図7: κ による応答予測の変動
時刻歴応答解析では個々の地震波の特性に応じて応答結果が変化するが、エネルギーの釣り合いによる応答予測では幾つかの仮定に基づく多少の変動はあるものの、包括的に応答を評価することが可能であり、免震建物(通常の建物も含め)の応答特性を誤ることなく評価できる手法であると言える。
地震応答解析結果を検証したり、設計した建物の入力エネルギーの総量をチェックすることに活用されることが望まれる。
参考文献
1)
秋山宏:建築物の耐震極限設計(第2版)、東京大学出版会、1980
2)
秋山宏:エネルギーの釣合に基づく建築物の耐震設計、技報堂出版、1999
3)
秋山宏:第1層エネルギー集中型柔剛混合構造の地震応答予測、日本建築学会論文報告集、第400号、1989.6
4)
高山、森田:エネルギの釣り合いに基づいた免震構造の応答予測法に関する研究、日本建築学会九州支部研究報告、第36号、1997.3
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