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我が国の積層ゴムの開発と変遷 免震構造レポート Vol.4
 

免震機構としてローラーボールやすべりを利用する発想は1900年以前から存在した。しかし、近代的な免震構造は積層ゴムの出現を待つ必要があった。積層ゴムを最初に使った建物はPestalozzi小学校(Skopje, Macedonia,1969)であった。ここで使用された積層ゴムは厚肉のゴム3層で、中間鋼板も利用されていないため、積層ゴム全体が大きく膨らんでいる。1970年代になれば、フランス、マルセイユのLambesc小学校などで近代的な仕様に基づく積層ゴムが利用されるようになる。1975年にはニュージーランドにおいて鉛プラグ入り積層ゴムが開発され、1981年には実際の建物に採用された。わが国では1986年に鉛プラグ入り積層ゴムを使用した建物が最初の評定を受けている。また、1982年にはMRPRAによって高減衰ゴム系積層ゴムが開発され、1985年にアメリカの最初の免震建物(裁判所)に採用されている。わが国で高減衰ゴム系積層ゴムを使った最初の評定物件は1988年である。このように現在使用されている積層ゴムは1980年前後には登場し、ゴム材料や製造方法なども改良が加えられてきている。


1991年には天然ゴム系積層ゴムの限界圧縮耐力を確認するために破壊実験が福岡大学の研究グループにより実施された。積層ゴムの圧縮耐力は非常に高く、ゴムよりも中間鋼板の方が先に破断するといった知見が得られた。この実験は、積層ゴムの設計面圧の設定や積層ゴムの荷重支持能力に対する不安を払拭する効果があった。この時期から積層ゴムの有限要素解析も実施され、積層ゴムの荷重支持のメカニズムが明らかにされるようになった。1995年には動燃(当時)・福岡大学などの研究グループにより天然ゴム系積層ゴムの水平限界性能を確認するための実験が実施された。この実験では面圧300kg/cm2までの圧縮せん断破壊試験を実施し、積層ゴムの荷重支持性能と水平変形能力を評価した。この実験成果は積層ゴムをより高い面圧で設計することを可能とし、免震建物の性能向上、上部建物の大型化へ対応に役立つものであった。直径1500mmの積層ゴムが最初に評定を受けたのは、天然ゴム系積層ゴムで平成7年(ただし、直径は1200mm)、鉛プラグ入りが平成2年、高減衰が平成9年である。高層免震建築では高い軸力を支持するために大径積層ゴムが使われる傾向にあるが、性能の評価や品質の確保については慎重さが求められる。






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